父、サ高住へ。
今年の2月、父が夜中にガスコンロの火をつけたまま忘れてしまった。近くにあった雑巾に火が燃え移り、幸い大事には至らなかったけれど、「このまま自宅での生活を続けるのは難しいかもしれない」と感じた出来事だった。
そこからはとてもスピーディーだった。話し合いを重ね、3月末、父はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に転居した。母はまだ実家にいる。
父の介護度は要支援2。でも、家族の肌感覚では以前より認知症の傾向が強くなっていることを感じている。介護認定の数字と、日々接している家族の実感は、必ずしも一致しないことがある。
転居先のサ高住は、建物の1階に内科クリニック・調剤薬局・地域包括支援センターが入っているところだった。見学に行ったとき、正直「ここならいいな」と思った。何かあってもすぐ受診できて、薬の管理もしてもらえる。費用は3食込みで月20万円弱。安くはないけれど、この安心感は大きい。
父の部屋には、壁にお薬カレンダーが飾ってあった。朝・昼・夕・寝る前と時間帯ごとにポケットがついていて、一包化された薬が日付順に並んでいる。飲み忘れも飲み間違いも起きにくい、在宅介護でよく使われるアイテムだ。薬剤師として、これが一番ほっとした瞬間だったかもしれない。ちゃんと管理してもらっている。
先日、息子を連れて表敬訪問をした。父はとてもうれしそうだった。
帰り道、ふたつの気持ちが混ざって、うまく言葉にならなかった。よかった、という安堵と、さみしくないといいな、という心配。どちらが大きいということもなく、ただ両方がそこにあった。
介護は、正解がわからないまま進んでいく。それでも、父が笑顔でいてくれる場所が見つかったことを、今はただよかったと思っている。
