薬局に、ホルムズ海峡の波が来た

ホルムズ海峡、という言葉をニュースで聞いたとき、正直なところ「遠い話だなあ」と思っていた。
それが今週、じわじわと薬局の棚に影響を及ぼし始めた。
発端は何気ない発注作業だった。軟膏ツボを注文しようとしたら、画面に「入荷予定:3ヶ月後」の文字。水剤瓶も、分包紙も、軒並み在庫がない。
分包紙は小さな子の粉薬を一包ずつ包む「紙」。……と書いたけれど、実はプラスチックフィルムでできている。名前に「紙」とついているのにだ。水剤瓶も軟膏ツボも、もちろんプラスチック。原油が止まれば、製造ができなくなる。そういうことだったのか、とニュースと棚の現実がようやく線でつながった。
このまま行くと、点眼瓶も怪しい。その次は錠剤を包むヒートも、きっと。
同僚と顔を見合わせて、「どうする?」と言い合う日が続いている。
そして今日も、カウンターで薬をお渡しした後、患者さんに言われた。 「容器代かかるなら次から他の薬局行くわ」
帰り際の、ひとことだった。
そうですよね、知らないですよね。 遠い海峡の話が、この小さな瓶につながっているなんて。
薬局の棚の向こうで、静かにざわざわしている。